ミキシングとは、複数のトラックのサウンドをステレオの2ミックスにミックスダウンする作業です。
楽曲を制作して完成させる最終工程の部分になります。
トラックメイクの一連の制作手順の流れで、ぜひ知っておきたいのがミキシングの知識です。
ミキシングと聞くと「難しそう」という印象をお持ちの方もいるかもしれません。
しかし、いくつかのポイントを抑えておくだけでも、かなりイメージに近いサウンドメイキングを行うことができます。
この記事が役立つ人
- DTM初心者
- ミキシングが苦手
- 迫力あるEDMにまとまらない
- 自分のトラックがなんかショボイ
併せて読んでおきたい記事:DTMを駆使したEDMトラック制作手順のおさらい「ビートから組み立てる」
1.ミックスは音選びから始まっている
よくトラック制作の最終段階で、思っていた感じで聴こえてこないパートをEQ(イコライザー)で強引に目立たせようとするDTMerをお見かけしますが、それは良くないです。
ミキシングで過信してはいけないのが、
後からいくらでもサウンドの修正が可能
という考えです。
ショボイ音色はいくらがんばっても良くならない!
元から音圧が弱かったり、倍音が少ない音色は、どれだけエフェクト処理を施しても良いサウンドにはなりません。
音選びの段階から、ミキシングが始まっていると考えても過言ではありません。
トラックの完成形をしっかりイメージして、始めから説得力のあるサウンドをチョイスしていきましょう。
音選びのコツは、単発で鳴らしてちょっとド派手な印象なくらいが良いでしょう。
余分な周波数帯域をカットすることは、存在しない周波数帯域を持ち上げようとするよりも格段に容易です。
2.各トラックは適正音量レベルで取り扱う
一曲のトラックの中には、さまざまなサウンドが含まれますが、ミキシングの際、それぞれの音域ごとに取り扱いやすい適正音量レベルがあります。
各パートのボリュームを適正音量レベルに調整するだけでも、全体のミックスバランスが良くなります。
3つの周波数帯域 Lo(ロー)Mid(ミッド)Hi(ハイ)を意識する
ミキシングを進めていく際、周波数帯域をざっくりと3つのエリアにわけてボリュームバランスを調整していきます。
そこでそれぞれの目安を確認しておきましょう。
- Hi=ハット、シンバル、SE音など=-12db~-9db
- Mid=ボーカル、コードパート、シンセリフ、キック、スネアなど=-9db~-6db
- Lo=ベース=-12db~-9db
およそ上記の範囲で音量を合わせてあげると、ミキサーのチャンネルボリュームでの各トラック間での音量調整がやりやすくなります。
ちなみに低音パートであるキックがMidに含むのは、Midあたりにアタック感の特徴があり、サウンドカラーをコントロールすることができるからです。
併せて読んでおきたい記事:EDM作曲のコツ!トラック制作でのミキシングの基本を理解しよう!
3.上下左右前後の3次元で音像を組み立てる
通常、耳にするステレオサウンド(2ミックス)は上下、左右、前後の3次元でレイアウトすることができます。
基本的な認識としては、
- 上下=音色毎の音域で配置
- 左右=パンニングで配置
- 前後=ボリュームとローカット処理で配置
ミキシングの基本は上下にサウンドを配置する
Lo、Mid、Hiの3つの帯域を意識して、音色選びを行うことが重要です。
基本的に低い音域のサウンドからボリューム調整をしていくと、きれいなバランスにまとめやすいです。
この時、より高い音域のサウンドは思い切ってローカット処理を行っていきましょう。
コツとしては、
音質が大きく変化するポイントのギリギリを追い込む
4.TechHouseトラックでミキシングしてみる
今回は例として、にわかに再燃しつつあるTechHouse系のトラックで解説していきます。
まずはステレオ2ミックスの音源をお聴きください。
そこそこ分離感よくミックスできると思います。
そこで、このトラックの制作を順を追って振り返ってみようと思います。
EDMとしては、まずはビートからミキシング
正直に申しますと、4つのKickサンプルをレイヤーしていますw
それぞれでEQ処理を行い、4つのKickを一つのミキサーチャンネルにまとめて、ひとつのKickサウンドとして仕上げています。
今回のKickは「キックの迫力が命!」的な感じで、あえて低域をブースとしていますね。
聴いてみた印象で自分のイメージと合致するのであれば、このようなイコライジングもありかなと個人的には捉えています。
Kickひとつとっても、Lo、Mid、Hiの考えに基づいてレイヤーを行っています。
複数のサウンドをレイヤーするときは、周波数帯域の担当を決めて重ねるとうまくいきます。
関連記事:パンチのあるキックの作り方
基本ビートにハットを追加して高域を補強する
聴き手のハートに刺さるビートを作るためには、ビートだけで成立すようなバランスにまとめる必要があります。
ショボイMIDI音源で鳴らしたようなビートではなく、一音一音無駄のないサウンドを組み合わせていくことによりグルーヴするビートを制作することができます。
ビートだけに関しても、しっかりLo、Mid、Hiのバランス感覚を養っていきましょう。
ミキシング時でのベースとウワモノの重ね方
DTM初心者においてベースとウワモノのミキシングが難関な声が多いですが、そう難しく考えることはありません。
低いパートから高いパートを積み木のように積んでいく
ベースパートはなるべくEQで不要な周波数をカットすることのない音色をあらかじめ選択しておくことが重要です。
そもそも重低音のないスカスカなベースラインを迫力あるサウンドにすることは不可能なので、トラックの方向性とマッチしていて、かつ低音成分や倍音成分を多く含む音色を選択しましょう。
次にウワモノパートを重ねていきますが、完全に低域をカットするのではなく、若干、ベースパートの周波数帯域をなじませるイメージでローカット処理を施していくのがコツです。
慣れるまでは、中々、思うようにサウンドの分離感と低音の量感のバランスをまとめるのが難しいかもしれませんが、研究心をもって臨みましょう。
5.ミキシングの大まかな流れをまとめると
今回はフロアトラック向けのガッツリしたサウンドのトラックだったので、わりと単純にLo、Mid、Hiを積み上げていく感じで、あまり左右のステレオレイアウトについて考えずにスッキリまとまりました。
しかし、さらにパート数が増えてくるとパンニングも活用して、左右のサウンドの分離感も視野に入れてミキシングする必要が出てきます。
ミックスのコツは低音から高音へ
やはりトラックの「ボトム」と呼ばれるだけに、ビートとベースのサウンドを決めてから、ウワモノパートを積んでいくイメージがまとめやすいです。
リズムセクションであるビートとベースだけでも、身体を揺らしたくなるようなサウンドに詰めていきましょう。
各パートの適正音量レベルに合わせてリミッティング
特にフロアトラックでは、耳障りなうるさいサウンドはノイズでしかありません。
しっかり聴かせたいパートが鳴ってくれるように、ミキサー上で各パートに適正音量レベルの上限を目安にあらかじめリミッターを挿しておきましょう。
EQ処理の基本はローカット処理
とにかくマスキングによってサウンドがこもってしまうことに、細心の注意を払ってください。
サウンドがモヤッとすることは、リスナーのハートもモヤッとしてしまうことと捉えましょう。
不必要なサウンドの被りを極力取り除いて、生き生きしたサウンドにまとめましょう。
6.ミキシングについて最後に
DTMがこれほど一般的になる以前は、ミキシングはプロのエンジニアの真骨頂みたいなイメージが強かったですが、DAWソフトや高機能なプラグインのおかげで、ミキシング自体かなり身近なものになりました。
近頃では、DTMを用いて作曲をしたり、トラックメイクをするだけでも、ミックスの良し悪しも含めて楽曲の評価をされてしまう風潮があります。
それだけ音楽制作が以前にも増して近い存在になったとポジティブに受け止めて、トラックメイクを探求していきたいですね!
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